「図面を保存せずに閉じてしまった」「間違えて上書きしてしまった」「突然ファイルが開けなくなった」「CADデータが入っているデバイスが認識しなくなった」など、CADのデータが失われる事態に直面した際には慌ててしまうことも多いものです。
図面作成に多くの時間をかけていたにも関わらず、たった1回の操作ミスやソフトの不具合でデータが失われることもありえます。中には、業務に大きな支障をきたすほど深刻なケースが発生することも少なくありません。
しかしながら、こうした状況でも正しい方法で対応すれば、CADデータを復元できる可能性があります。
AutoCADをはじめとする多くのCADソフトには、自動保存ファイルやバックアップファイル、テンポラリファイルなど、万が一に備えた仕組みが搭載されています。さらに、OSやクラウドストレージの機能、外部の復旧手段なども活用することで、失ったCADのデータを復元できる可能性が高まります。
本記事では、CADデータを復元するための7つの方法を中心に、トラブルの状況ごとに適した対処方法、やってはいけない行動、そして再発防止のための予防策までわかりやすく解説していきます。
CADデータを復元する7つの方法
CADデータが失われた場合に焦る気持ちのまま操作を続けると、復元の可能性が低くなってしまうことがあります。まずは落ち着いて、以下の7つの方法を確認してみましょう。
- 図面回復マネージャで復元する
- 自動保存ファイル(.sv$)から復元する
- バックアップファイル(.bak)から復元する
- 以前のバージョン機能を使う
- テンポラリファイルから復元する
- バックアップから復元する
- データ復旧の専門業者に相談する
1.図面回復マネージャで復元する
AutoCADなどの一部のCADソフトには、「図面回復マネージャ」という自動回復機能が備わっています。そのため、ソフトが突然終了したり、正常に終了できなかったりした場合でも次回起動時に自動的に回復可能なファイルがリスト表示されることがあります。
【図面回復マネージャを使ってCADデータを復元する方法】
- AutoCADを再起動する。
- 起動時に「図面回復マネージャ」が表示された時には、一覧の中から目的のファイルを選ぶ。
- ファイル名の横にある「回復(Recover)」ボタンをクリックする。
- 自動でCADデータの復元処理が行われる。
【注意点】
・図面を復元できた場合には別名で保存してオリジナルを上書きしないように注意しましょう。 |
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・一度でも手動でCADデータを保存して終了した時には、この機能が表示されないことがあります。 |
・復元処理中にエラーが出た場合には、無理に操作や作業を続けず他の方法を試すことを検討しましょう。 |
2.自動保存ファイル(.sv$)から復元する
AutoCADには一定時間ごとに図面の状態を自動保存する機能があり、そのファイルは「.sv$」という拡張子で一時フォルダに保存されます。そのため、CADデータが失われるトラブルに遭遇した時には自動保存ファイルから復元する方法が試せます。
【自動保存ファイルを使ってCADデータを復元する方法】
- エクスプローラーで次のパスにアクセスする→C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Temp
- フォルダ内から、日付やファイルサイズを参考に該当する「.sv$」ファイルを探す。
- 該当ファイルをコピーしてデスクトップなど別の場所に貼り付ける。
- ファイルの拡張子を「.dwg」に変更する。
- AutoCADでファイルを開いて内容を確認→別名で保存する。
【注意点】
・このファイルはソフトが正常終了した時には、自動的に削除されることがあります。 |
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・ファイル自体が破損している可能性もあるため、内容を確認してから保存しましょう。 |
・項目5でファイルを保存する際には必ず、別名で保存した方が良いものです。 |
3.バックアップファイル(.bak)から復元する
AutoCADでは図面ファイルを上書き保存した際に、直前の状態を「.bak」ファイルとして自動的に作成する設定があります。そのため、CADデータを復元したい時にはバックアップファイルから復元する方法も選択肢の1つに挙がってきます。
【バックアップファイルからCADデータを復元する方法】
- 問題の「.dwg」ファイルがあるフォルダを開く。
- 同じ名前で「.bak」拡張子のファイルが存在するかを確認する。
- 「.bak」ファイルをコピー→拡張子を「.dwg」に変更する。
- AutoCADで開く→必要に応じて別名で保存する。
【注意点】
・「.bak」ファイルは常に作成されるとは限らないものです。(設定によります) |
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・既に何度も上書きされている時には、古い状態になっている可能性があります。 |
4.以前のバージョン機能を使う
Windowsの機能を使って、ファイルやフォルダの「以前のバージョン」を復元できることがあります。これにより、CADデータを過去の保存状態に復元できる可能性があります。
【Windowsの「以前のバージョン」機能を使ってCADデータを復元する方法】
- 該当する図面ファイル、または保存フォルダを右クリックする。
- メニューから「以前のバージョンの復元」を選択する。
- 表示された過去のバージョンの中から、復元したい日時のものを選ぶ。
- 「復元」ボタンを押すか、「コピー」を使って別の場所に保存する。
【注意点】
・この機能は、システムの復元ポイントやファイル履歴が有効になっていないと使えないものです。 |
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・一部のエディション(Windows Homeなど)では使えないことがあります。 |
5.テンポラリファイルから復元する
AutoCADを使っていると作業中に一時ファイル(テンポラリファイル)が作成されることがあります。これらは通常、ソフト終了時に削除されるものですが、異常終了などが起きた際に残る場合があります。
【テンポラリファイルからCADなどのデータを復元する方法】
- エクスプローラーで C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Temp フォルダにアクセスする。
- 「.ac$」やその他一時ファイルの中から日付やファイルサイズ、名前を参考に図面に関係しそうなファイルを探す。
- 対象ファイルをコピーして拡張子を「.dwg」に変更してAutoCADで開く。
【注意点】
テンポラリファイルはあくまで一時的な作業情報の断片であり、復元を目的に設計されたファイルではないものです。そのため、正常には開けないことが多い他、内容が破損している・不完全な場合もあります。無理にファイルを開こうとすると他の一時ファイルまで損なう可能性があるため、不安な場合は自己判断での操作を避け、他の方法を検討する・データ復旧の専門業者に相談する方が安全です。
6.バックアップから復元する
CADで作成した図面ファイルがクラウドサービス(OneDriveやGoogle Drive)と同期されていた場合には、過去のバージョンや履歴から復元できる可能性が高まります。
【OneDriveからCADデータを復元する方法】
- OneDriveのWebサイトにログインする。
- 対象ファイルを右クリック→「バージョン履歴」を選択。
- 復元したい日時のバージョンを選び、「復元」または「コピーを保存」を選択する。
【注意点】
・オフライン保存しかしていない場合は履歴が残らないことがあります。
・クラウド以外にも、USBメモリや外付けHDD、社内NASなどの別の媒体に欲しいデータを保存していることもありえます。別の保存先も確認しておきましょう。
7.データ復旧の専門業者に相談する
大事なCADのファイルを誤って消した・上書きした・CADデータを保存しているHDD、SSD、USBメモリなどが認識しない、パソコンが起動しない等のトラブルに遭遇した時には慌ててしまう事も多いものです。
復元したいCADデータが大事・無くなったり取り出しができなくなったりしたら困ると少しでも考えた場合には手を止めてデータ復旧サービスを利用することが問題解決への近道になりえます。
CADデータはファイル構造が複雑で破損しやすい・上書きや断片化による影響を受けやすい他、業務で使用する重要データであることがほとんどです。そのため、安易に復元作業を試したり、使用を続けようとしたりすることでデータが完全に消失する事態に陥って後悔することも多く起こりえます。
早く安く確実にCADデータを復元したい方は、何かしら機器に不具合が出た時点で手を止めてデータ復旧の専門業者の無料相談を利用した方が希望する結果に繋がるものです。
【ポイント】
・データ復旧の専門業者は、削除・破損・上書きされたCADデータの復旧に特化した技術を持っています。
・特に、誤ってフォーマットや上書き保存してしまったケースやPC・外付けHDD・SSD・NASにトラブルが発生している場合などは、早めの相談が望ましいものです。
・状況によっては、クリーンルームなど専用環境での作業やストレージの物理解析が必要になることもあります。
【注意点】
・無理に復旧ソフトを使ったり、CADデータが保存されていたPCの再起動、HDD、SSDなどの電源の入り切りやケーブルの抜き差しなどを行ったりするだけでも元データが上書きされてしまうリスクがあるため、CADデータを失いたくない方は手を止めることが最善の対処方法にもなりえます。
・トラブルが生じた直後の状態を保ったまま専門の復旧業者に相談した方が希望する結果に繋がります。
CADデータを失った状況に応じた復元方法を紹介
CADデータが消えた、壊れた、保存できなかった…そんなトラブルが起きた時には、「自分のケースではどう対応するのが正しいのか?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
本項目では、CADデータが失われた状況ごとに適切な復元方法をわかりやすく整理していきます。
- CADデータを誤って上書き保存してしまった場合の復元方法
- CADデータを保存せずにソフトが終了してしまった際の復元方法(未保存)
- CADのファイルが壊れて開けなくなった時の復元方法
- CADデータを保存しているデバイスにアクセスできない場合の復元方法
1.CADデータを誤って上書き保存してしまった場合の復元方法
CADデータを誤って上書き保存してしまった際にも「.bakファイル」(バックアップ)やWindowsの「以前のバージョン」機能で元の状態に戻せる可能性があります。
【試せる復元方法例】
・「.bakファイル」があれば、拡張子を .dwg に変更して開く。 |
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・保存フォルダやデスクトップでファイルを右クリック →「以前のバージョン」での復元を試みる。 |
・クラウド(OneDriveなど)を使っていた時には「バージョン履歴」を確認する。 |
【注意点】
・上書き直後は復元の可能性が高いものの、操作を続けると上書き状態が固定されやすくなります。 |
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・「.bakファイル」が作成されていないことも多く、焦らず他の復元方法も並行して探すことも重要です。 |
2.CADデータを保存せずにソフトが終了してしまった際の復元方法(未保存)
CADデータを保存せずにソフトが終了した際には図面回復マネージャや自動保存ファイル(.sv$)を使った復元方法が選択肢に挙がってきます。
【試せる復元方法例】
・AutoCADを再起動→起動時に「図面回復マネージャ」が出るか確認する |
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・C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Temp にある「.sv$ ファイル」を探して「.dwg」に変換して開く |
【注意点】
・一時ファイル(.ac$)も参考になりますが、無理に開かず慎重に取り扱いましょう。 |
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・ソフトを正常終了した時には「.sv$」は削除されている可能性があります |
・作業終了後にすぐにPCを再起動すると、回復データが失われる場合があります |
3.CADのファイルが壊れて開けなくなった時の復元方法
CADのファイルが壊れて開かなくなる・データにアクセスができなくなることも起こりえます。そんな時には図面回復マネージャ、バックアップファイルの確認やデータ復旧の専門業者へ相談する方法が有効な手段になりえます。
【試せる復元方法例】
・「図面回復マネージャ」で復元可能か確認する。 |
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・「.bakファイル」があれば復元を試す。 |
・クラウドや外付けHDD、SSD、USBメモリ、NASなど他の保存場所に欲しいCADデータが無いか確認する。 |
・データ復旧の専門業者に相談する。 |
【注意点】
・ファイルを開こうとして何度も操作すると、破損が進行する恐れがあります。 |
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・開かなくなったCADのデータが重要、業務で使用しているものであれば、余計な操作や作業を進めて後悔する前にデータ復旧の専門業者に相談することを優先しましょう。 |
・安易に復元ソフトを使用すると復旧自体が不可能な状態に陥る可能性があります。 |
4.CADデータを保存しているデバイスにアクセスできない場合の復元方法
CADデータを保存しているデバイス、例えば外付けHDDやSSD、USBメモリ、NASなどにアクセスができない・エラーメッセージなどが表示される時には機器が物理的・機械的に故障している可能性があります。電源の入り切りや再起動、ケーブル類の抜き差しなど簡単にできることを試しただけでも状態が重篤化することが多いため、自力での対応は控えて早めにデータ復旧の専門業者へ相談するのが安全です。
【試せる復元方法例】
・NASの場合はLANケーブルやIPアドレスの確認、NAS Navigator2などの管理ツールを確認する |
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・外付けHDDやSSD、USBメモリが認識しない状況なら別のポートやPCで接続テストを行う |
【注意点】
・通電や再起動を繰り返すと障害が悪化して復元自体が困難になることがあります |
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・異音がする、認識されない、フォーマット要求が出る時には即座に操作を止めることが重要となります。 |
・上記のような状況では復旧ソフトの使用は避けましょう。復旧ソフトでは対応ができないだけでなく、後悔する結果に直結することがほとんどです。 |
※CADデータが失われるトラブルに遭遇した際にはご自身の状況がどれにあてはまるかを見極めることがデータを守るための第一歩となります。特に業務で使用するCADファイルにトラブルが生じた時には、早めに専門家へ相談することで復元の可能性を大きく広げられるものです。
↓外付けHDDが認識しない等のトラブルが発生した際にはこちらの記事もご確認下さい。
CADのデータを復元したいときに復旧ソフトは使っていいの?注意点とリスクを詳しく解説
「消えてしまったCAD図面、復旧ソフトを使えば戻せるかも…?」
そんなふうに考えて、インターネットで復元ソフトを検索する方も多いのではないでしょうか。確かに、復旧ソフトは削除されたファイルを一時的に検出・復元できる便利なツールの1つとして挙げられます。しかしながら、CADデータのように構造が複雑で業務的にも重要なファイルに対しては、必ずしも安全とは言えないものです。「自己判断で復旧ソフトの機能を使ってしまって、かえってデータが壊れてしまった」という声も少なくありません。安易な操作で取り返しがつかない状態に陥ってしまう前に、まずはこの項目を読んで冷静に判断していただければと思います。
- 復旧ソフトでCADデータは復元できるの?
- 復旧ソフトの使用が危険なケース
- 復旧ソフトを使う場合の注意点
- データ復旧の専門業者に相談した方が良いケース
1.復旧ソフトでCADデータは復元できるの?
復旧ソフトは、削除されたファイルや失われたデータ領域をスキャンして、見つかったファイルを一時的に復元するためのツールです。状況によっては、一時的に削除されたCADファイル(.dwg、.dxfなど)を検出できることもあります。
ただし、検出されたファイルが完全な状態であるとは限りません。特にCADデータは、
・ファイル構造が複雑で破損しやすい |
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・ソフトやOSとの依存性が高い |
・上書きによる影響を受けやすい |
・断片化しやすい |
といった特徴があるため、復旧ソフトでは正確な再構築が難しく、表面的にファイルが復元されたとしても、中身が壊れていたり、開けなかったりするリスクが非常に高いものです。
2.復旧ソフトの使用が危険なケース
以下のような状況では、復旧ソフトの使用は危険な行為になりかねないため注意しましょう。
・CADデータを上書き保存してしまった |
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・保存していたHDDやNASに物理的なトラブル(異音・認識不良など)が生じている |
・OSが不安定で再起動を繰り返す状態で使い続けようとしている |
・過去に別の復旧ソフトを試していて、複数回スキャンや保存を繰り返している状況 |
・復元したいCADデータが業務上の重要データで、失うと支障が出る |
これらの場合には、復旧ソフトのスキャン処理自体がデータ領域を上書きしてしまい、復元の可能性を大きく下げてしまうことがあります。
3.復旧ソフトを使う場合の注意点
復旧ソフトの使用は推奨されないものの、どうしても試したい時には以下のような状況に限って選択の余地が出てきます。
・復元したいCADデータが業務用ではなく、最悪の場合は作り直しが可能なもの |
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・復元できなくても影響が少なく、失敗しても問題がない |
・復元したいCADファイルが1つだけで、どうしても自分で復旧を試したい状況である |
その上で復旧ソフトの機能を使う際には、以下の点を守りましょう。
・復元したいファイルがあるドライブに復旧ソフトをインストールしない |
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・復元データは必ず別のドライブに保存する |
これだけでも、上書きやさらなるデータ破損のリスクをある程度回避できることが見込めます。しかしながら、復旧ソフトを使った後に「開けない」「壊れていた」などの問題が発生することも多く、完全な復元が保証されるわけではありません。
少しでも不安がある場合には、無理に操作や作業を進めずにデータ復旧の専門業者へ相談しましょう。
4.データ復旧の専門業者に相談した方が良いケース
次のようなケースでは、早い段階でデータ復旧の専門業者に相談することが推奨されるものです。
・CAD図面が重要な業務データである |
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・HDDやNASにアクセスできない・異音がする |
・パソコンが起動しない |
・誤ってフォーマット・初期化してしまった |
・エラーメッセージが表示されてCADなどのデータが開かない |
※なお、復旧ソフトを使用した時にはデータが意図しない形で上書きされる・機器の故障具合が悪化する・破損箇所が増えるなど、専門業者でも対応が難しくなるケースも起こりえます。そのため、できるだけ復旧ソフトを使用する前に無料相談から利用するようにしましょう。CADデータは業務に直結する重要な情報であり、失われた場合の影響は大きいため、焦らず冷静に判断することが重要となります。
↓パソコンが起動しない状況でお困りの場合にはこちらも参照ください。
CADのデータを復元したい時に避けたい行動は
CADデータが消えてしまった時には、焦ってすぐに何か操作をしてしまう方が多く見受けられます。しかしながら、誤った行動をとってしまうと本来復元できたはずのデータまで完全に失われてしまうことがあります。
本項目では、「CADデータが消えたときにやってはいけない操作」や「よくある誤解」をわかりやすく整理しました。CADデータを安全に取り戻すためにも以下の内容を確認しておきましょう。
- 電源の入り切りや再起動を繰り返す
- 復旧ソフトをすぐに使う
- HDDやNASに問題がある状態で通電し続ける
- NASでRAIDを再構築・初期化する
- フォルダ整理・ゴミ箱の清掃などを行う
1.電源の入り切りや再起動を繰り返す
CADのデータが失われるトラブルが発生した際に電源の入り切りや再起動を行うと、消えたデータの領域にOSやソフトが自動的に上書きする可能性があり、復元できなくなる危険性が高まります。
特に一時ファイル(.sv$や.ac$など)やキャッシュが書き換えられてしまうと、図面の回復チャンスが失われる事態に直結するため、思い当たる操作をしてしまった後には手を止めて冷静になることが重要となります。
※パソコンのデータの場合、通電し続けるだけでもデータの上書きリスクがあるため、復元したいファイルやフォルダがある場合には電源を切ることを優先しましょう。
↓パソコン内のデータを取り出したい・復旧したいと考えた時にはこちらも参照下さい。
2.復旧ソフトをすぐに使う
ネットで見つけたフリーソフトを復元したいファイルがあるドライブにインストールしてしまうのは非常に危険な行為になりえます。
復旧ソフトのインストールやスキャン処理によって、消えたCADファイルが格納されていた領域が上書きされる恐れがあり、専門業者でも復元が困難になる事態に陥ることもありえます。復旧ソフトは試す前に「データの重要性」「本当に安全な操作か」を考えることから始めましょう。
3.HDDやNASに問題がある状態で通電し続ける
異音(カチカチ・カタカタ音)がする・エラーメッセージが表示される・ランプが点灯しない、ランプの点滅が異常になる時には物理障害が発生しているサインであることがほとんどです。通電を続けるだけでもディスク面の傷やヘッド故障が悪化してしまいます。
この状態で復旧ソフトを使う他、ケーブルを何度も抜き差しするのは避けましょう。すぐに電源を切り、データ復旧の専門業者に相談することが重要となります。
4.NASでRAIDを再構築・初期化する
NASに保存していたCADデータが読めなくなった際には、管理画面で「初期化」や「RAID再構築」を選ばないようにしましょう。
RAIDの再構築処理は、内部のデータ構造を上書きしてしまう可能性があり、誤った設定で進めるとすべてのデータが消失する事態に直結することもありえます。
※NASに保存するファイルやフォルダは共有で使う・業務上の大事なデータであることがほとんどです。NASにアクセスができない・ファイルやフォルダが開かない・エラーメッセージが表示される・NAS本体のランプが赤や橙色など異常を示す・CADデータが破損している等の不具合が出た際にはNAS内でデータが保存されているHDDが物理的・機械的に故障していることが多く、慎重な対応が求められます。NAS内のデータが大事・無くなったり取り出しができなくなったりしたら困る・早く安く確実に問題を解決したい時には手を止めてプロのデータ復旧業者の無料相談を利用することを優先しましょう。希望する結果に繋がります。
↓NASにアクセスができない状況でお困りの時にはこちらの記事もご確認ください。
5.フォルダ整理・ゴミ箱の清掃などを行う
「不要ファイルを整理しよう」と思って操作を加えると、意図せず必要なCADファイルや関連ファイル(Xrefなど)を完全に消してしまうことがあります。
削除直後の状態であれば復元できたものが、手を加えたことによって完全に失われるケースもありえます。必要なファイルやフォルダを誤削除したことに気付いた時には、機器の使用を止めることが重要となります。
【まとめ】
・操作を止めることが最善の対応
CADファイルに限らず、データが消えた直後は「何かしないと」と思いがちですが、まずは操作を止めることこそが復元成功の第一歩です。
CADデータは破損や上書きに非常に弱いため、焦って行動するほど復元の可能性が下がってしまいます。
「何もしない」という勇気を持ちつつ、正しい手順で安全に進めていきましょう。
↓パソコンのごみ箱からデータを削除してお困りの方はこちらも参照下さい。
CADのデータが失われる原因とは?
CADファイルが突然消えてしまった、開けなくなった、保存されていなかった…その原因は1つではありません。状況によっては、知らず知らずのうちに消失を招く操作をしていたケースも挙げられるものです。
本項目では、CADデータが失われる主な原因やパターンを整理してどのような状況で発生するかをわかりやすく紹介していきます。
- 上書き保存してしまった
- 保存しないままソフトが終了した(未保存)
- 誤って削除・移動してしまった
- 保存先(HDD・NAS・USBメモリなど)の不具合
- CADファイルが壊れて開けなくなった
- クラウド保存の同期ミス・上書きトラブル
- 保存形式や拡張子の誤り
1.上書き保存してしまった
一度保存した図面に別の修正を加え、元データを残さず上書き保存してしまうケースです。特に「別名で保存」をしていない時には前の状態に戻すのが難しくなる傾向にあります。
2.保存しないままソフトが終了した(未保存)
ソフトがフリーズ・クラッシュしてCADデータを保存しないまま落ちてしまったケースです。これには停電やPCのバッテリー切れも含まれます。
3.誤って削除・移動してしまった
ファイルやフォルダを誤って削除したり、移動先が分からなくなったりしたケースです。共有フォルダやNASで起きやすいトラブルでもあります。
↓共有フォルダのデータを消してしまってお困りの場合にはこちらの記事もご確認ください。
4.保存先(HDD・NAS・USBメモリなど)の不具合
CADファイルを保存していた外部ストレージが物理的・論理的に故障してしまったケースです。
5.CADファイルが壊れて開けなくなった
CADファイル自体が破損して開けない状態になっているケースです。保存中に異常終了した場合や外部参照の欠損、バージョン非対応が原因であることもありえます。
6.クラウド保存の同期ミス・上書きトラブル
OneDriveやGoogle Driveなどを使用している際に自動同期のタイミングでCADなどのファイル情報が失われることもあります。特に複数端末で編集していた場合に起こりやすいものとして挙げられるものです。
7.保存形式や拡張子の誤り
保存時に別形式(例:.dwtや旧バージョン形式)を選んでしまい、見つけられなくなっていることも起こりえます。ファイル自体は残っていても、誤って消えたと思い込むケースもありえます。
CADファイルの種類と特徴をやさしく解説
CADデータを復元しようと思っても、「そもそもどのファイルが本体なのか」「拡張子の違いがよくわからない」と感じたことはありませんか?ここでは、代表的なCADファイルの種類や役割をわかりやすく紹介していきます。
・代表的なCADファイルの拡張子と特徴
拡張子 | ファイルの種類 | 主な用途 | 特徴・補足 |
---|---|---|---|
.dwg | 図面データ本体(AutoCAD) | 通常の保存ファイル | 最も一般的なCADファイル。AutoCAD標準の形式で、図面のすべての情報が含まれる。 |
.dxf | データ交換フォーマット | 他ソフトとの連携 | Drawing Exchange Format。互換性が高く、テキスト形式もあり。軽量でシンプルな構造。 |
.bak | 自動生成のバックアップ | 上書き保存時に作成 | .dwg の保存時に自動生成されるバックアップファイル。拡張子を .dwg に変更して復元できる事がある。 |
.sv$ | 自動保存ファイル | ソフト異常時の復元用 | 一定時間ごとに自動保存される一時ファイル。ファイル名を変更して .dwg にすれば開けることもある。 |
.ac$ | テンポラリファイル | 作業中の一時情報 | AutoCADが作業中に一時的に生成するファイル。通常は削除されるが、異常終了時に残っている場合もありえる。 |
.dwt | テンプレートファイル | 新規図面作成時の雛形 | 標準レイヤー構成や図枠などが保存されたひな型ファイル。新規保存時には .dwg に変換される。 |
・使用するCADソフトによってはファイル形式が異なる
上記で紹介した拡張子は、主にAutoCADで使われるものです。他のCADソフト(例:Jw_cad、Revit、ARCHICADなど)では、異なる独自の形式を使うこともありえます。
図面がどのソフトで作成されたかが不明な場合でも、拡張子からある程度の手がかりを得ることが可能となります。
CADデータを安全に保つために抑えておきたいポイント
CADデータが消えてしまうと図面の作り直しや納期遅延など、大きな影響が出ることがあります。そのため、日頃からCADデータの保存方法や保管環境の見直しがとても重要となります。
ここでは、「CADデータの消失を防ぐ」ために日常的にできるポイントを整理しました。大きなトラブルになる事を未然に防ぐためにもチェックしておきましょう。
- 「.bakファイル」の自動生成設定を確認する
- 自動保存機能が有効かどうか確認する
- 保存場所はローカルとクラウドの二重管理がおすすめ
- 外付けHDDやNASの状態も定期的に確認する
- 新規ファイルはテンプレートから別名で保存を徹底する
1.「.bakファイル」の自動生成設定を確認する
AutoCADでは、図面を上書き保存した際に自動でバックアップファイル(.bak)が生成される設定があります。設定によっては無効になっていることもあるため、一度確認しておきましょう。
2.自動保存機能が有効かどうか確認する
一部のCADソフト(例:AutoCAD)には、作業中のデータを定期的に一時保存する「自動保存」機能が備わっています。CADデータの消失トラブルを防ぐためにも使用しているCADソフトの環境設定を確認して自動保存が有効かどうか、また、保存間隔や保存場所の設定が適切かを見直しておくと安心できます。
3.保存場所はローカルとクラウドの二重管理がおすすめ
ローカル(パソコン内部)とクラウド(OneDriveやGoogle Driveなど)の両方にCADデータを保存しておくことで、どちらか一方にトラブルが起きた際にも即座に対応が可能となります。
ただし、クラウドの自動同期による上書き事故が発生することもあるため、意図しないタイミングでの同期を防ぐためには使用方法を把握しておくことが必要となります。
4.外付けHDDやNASの状態も定期的に確認する
保存先として使っている外付けHDDやネットワークストレージも消耗品の1つである日突然、認識しない・アクセスができない等の問題が出ることもありえます。壊れる前兆が無いか確認しておくことも重要となります。
・動作が遅くなっていないか
・認識できる日と認識できない日は無いか
・使い始めて数年経っていないか
・エラーメッセージは出ていないか
・途中で止まったり、挙動不審になったりしていないか
上記のような点に注目して必要であれば交換やバックアップ計画の見直しを行いましょう。
5.新規ファイルはテンプレートから別名で保存を徹底する
作業開始時に、テンプレート(.dwt)から新規図面を作成した際には最初に「別名で保存」しておくことで、上書きや保存忘れによる事故を防げます。
特にチームで作業する現場では、個人フォルダと共有フォルダを分けて保存管理することも重要です。
※CADファイルのデータ消失は完全に防ぐことは難しくても、日常的な保存習慣や環境の整備によって、リスクを最小限に抑えることは可能となります。
「保存したつもりだった」「自動で残っていると思った」…そんな事態を防ぐためにも今一度ご自身の作業環境を見直しておきましょう。
CADデータ復元の重要ポイントまとめ|落ち着いた対応が成功のカギ
CADデータは設計図や図面、建築計画など、業務の中核を担う非常に重要なファイルです。誤って大切なCADファイルを削除してしまった、整理中に必要なフォルダごと削除してしまうといった操作ミスも多く見られる他、CADデータを保存しているパソコンや外付けハードディスクやSSD、NASなどのストレージに不具合が生じると、突然アクセスができなくなる・機器が認識しない・ファイル自体が消えてしまうこともありえます。
また、こうしたトラブルが発生すると、作業のやり直しや納期の遅延など、業務全体に支障が出る可能性があります。
大切なデータが突然消えてしまった、CADファイルを保存していたデバイスが認識しない、パソコン自体が起動しないなど、深刻な異変に気づいた場合には、焦って電源の入り切りや再起動を繰り返したり、復旧ソフトを試したりする前に、まずは手を止めることが大切です。
CADデータは構造が複雑で上書きや断片化にも弱く、誤った操作によって復元の難易度が一気に高くなることがあります。CADデータが大事だと感じたなら、データ復旧の専門業者の無料相談を利用することを優先しましょう。落ち着いた初期対応を行う事で希望する結果に繋がります。